目標CPAの基本をおさえる ~利益とコストの関係~

事業を成功させるにはコンバージョンを増やすことが必要ですが、そのコンバージョンに対してどのくらいコストがかかっているかを把握することも同じように大切です。以下では、「CPA・CPO」の用語や計算式から、設定すべき「目標CPA・目標CPO」についての基本を紹介します。この記事が、“コンバージョンとコストのバランス”を考えるきっかけになれば幸いです。

CPA・CPOとは?

CPA・CPOはともに広告1件当たりの成約単価、「つまりコンバージョン(以下、CV)に至るまでに広告1件あたりにいくらのコストがかかったのか」のかを示す指標ですが、その定義は明確に異なります。

CPAの定義

CPAとは、Cost Per Acquisition(またはAction)の頭文字をとって略した言葉であり、「新規顧客獲得単価(Acquisition)、または顧客行動単価(Action)」を意味します。つまり、「顧客の獲得や顧客の行動」というCVに至るまでに、広告1件当たりいくらの費用がかかったのか」を示しています。

CPOの定義

CPOとは、Cost Per Orderの頭文字をとって略した言葉であり、「受注1件あたりの単価」を意味します。これは受注=「顧客に実際に商品やサービスを注文してもらう(実際にお金が発生する)」というCVに至るまでに、広告1件当たりいくらの費用がかかったかを示しています。※CPOは基本的に、無料会員登録や無料ダウンロードなどを経て受注が発生するような、CV地点が複数ある場合に考えられます。

CPAとCPOの例

ここで、CPAとCPOについてSpotify(スポティファイ)を例にあげて説明します。

(画像引用元:https://developer.spotify.com/branding-guidelines/)

Spotifyはスウェーデンの企業スポティファイ・テクノロジーによって運営されるデジタル音楽配信サービスであり、世界中のアーティストによる5,000万以上の楽曲が提供されています。音楽再生などの基本的機能は無料で利用できますが、機能制限なく自由に楽しめる有料プランもあります。

無料会員登録をacquisitionと呼ぶ

Spotifyで基本的な音楽再生などの機能を無料で楽しむには、まずWebサイトで無料会員登録が必要です。この「無料会員登録」は顧客の獲得、つまりacquisition(取得、獲得)であり、ここに至るまでにかかる広告1件あたりの成約単価はCPAとなります。

有料会員登録をorderと呼ぶ

一方で、無料で楽しめる機能には制限があります(自由に好きな曲を再生できずシャッフル再生になるなど)。ここで次のステップとして勧められるのが「Premium」と呼ばれる有料会員プランです。月額980円で利用することができ、機能制限なく自由に音楽を楽しめます。この「有料会員登録」は同じ顧客の獲得でも「お金が発生している」ためorder(注文)となり、ここに至るまでにかかる広告1件当たりの成約単価はCPOとなります。

なぜ目標CPA・目標CPOが重要なのか?

CPA・CPOについての基本的な説明をしたところで、次に目標CPA・目標CPOについて紹介します。

利益をどれだけ残したいか

前述のように、CPAやCPOは広告1件あたりの成約(CV)単価、つまり「その広告において、成約(CV)1件あたりいくらの費用を割いているか」を表します。一言でいえば、「利益からいくらコストを割いているか」ということです。

ここから考えると、目標CPA・目標CPOは文字通り目指したいCPA・CPOであり、「利益のうちここまでならコストをかけられる」と考えられる数値を指します。これは逆に言えば、「利益をどのくらい残したいか」を考えることにもつながります。

例えば、あるバックを1つ10,000円で販売するとしましょう。バックの原価は1つ3,000円とします。この条件において、「原価を引いた粗利を30%は残したい」のであれば、目標CPAは4,900円と算出することができます。

事業においてゴールとなるコンバージョンを設定することは大変重要ですが、そのコンバージョンにどれだけコストがかかっているかをあまり考えずにいる方は少なくありません。目標CPAや目標CPOを考えることは、最終的な利益も含めてより明確に事業の戦略を練るために重要であるといえます。

CPA・CPOの計算式

広告費用 ÷ コンバージョン件数

CPA・CPOは広告1件当たりの成約単価を表すため、広告費用をコンバージョン件数で割ることで数値を算出することができます。例えばあるWebサイトへの「無料会員登録」を促進するために広告費用を100,000円かけたところ50名の登録があった場合は以下のような式になります。

広告費用100,000円 ÷ 無料会員登録(CV)50名 = CPA2,000円

つまり、1名の無料会員登録をしてもらうのに広告費用を2,000円かけた、ということになります。

CPAは上がると利益が圧迫され、下がると利益が増加する

CPAの数値が高いと、それだけ成約(CV)1件あたりにかける広告費用が多かったということになり、逆に数値が低いならば、1件あたりにあまり広告費用をかけなかったということになります。例えば前項であげた5,000円の靴の場合で考えてみましょう。

例1)広告費用100,000円 ÷ 購入80足 = CPA1,250円

例2)広告費用150,000円 ÷ 購入100足 = CPA1,500円

例1・2を比較すると例2のほうがCPAの数値が高く、靴1足を販売するのにより広告費をかけたということになります。

靴1足の原価が2,000円の場合、1足5,000円で販売すると粗利は3,000円になります。例1の場合は粗利3,000円から広告費用が1,250円割かれており、残る利益は1,750円。同様に例2)の場合は残る利益は1,500円となります。つまり、CPAがより低い方が利益が増加し、高いと利益が圧迫されるということです。

CPAは下げればいいのか?

CPAが低いほど利益が増加するならば、目標CPAも可能な限り低く設定すれば最も利益を出せるのではと考える方もいるのではないでしょうか?確かにCPAは低いほど利益は増加する(圧迫されない)ようになりますが、必ずしも“低いほど良い”というわけではありません。目標CPAの設定は「コンバージョンとのバランス」を考えることがカギになります。詳しくはこの後の項目で説明します。

商材別の目標CPA・目標CPOの考え方

目標CPA・目標CPOはすべての商材で同じことが言えるのではなく、各商材ごとに異なる考え方が必要になります。以下では、「単品商材」「Webサイトへの無料会員登録」「サブスクリプション」を例に紹介します。

単品商材の場合

単品商材とは前述の靴の例のように「何か一つの商品を販売する」場合を指します。

CPAとCVは比例する

CPAの数値が高いということは、「それだけ広告にお金をかけている」という考え方もできます。ここで大切なポイントは、単品商材を販売する場合、広告費用をかけるほど商材は売れる傾向にあるということです。つまり以下の図のように、CPAとCVは比例しているといえます。

CPAは安すぎても良くない

CPAとCVが比例することを踏まえると、前項で記した「目標CPAは必ずしも低いほどいいわけではない」ということの理由が見えてきます。目標CPAを可能な限り低く設定する=広告費用を下げるということは、それだけ広告の選択肢を狭めてしまうということです。CPAの上げ下げで扱える広告媒体の選択肢は大きく変わります。広告の選択肢が狭まれば、その分CV数も下がり、売上全体が減少してしまいます。これでは本末転倒ということです。

大切なのは“妥当なライン”で考えること

CPAは安すぎると良くない、とはいえ、高く設定する=広告費用をかけすぎると利益が残らないどころか、赤字になってしまう恐れがあります。つまり、「粗利の何パーセントを残したいか」を念頭に置きながら、広告費用の負担が大きくなりすぎずCV数が下がりすぎない“妥当なライン”を狙うことが有効といえるでしょう。

Webサイトへの無料会員登録の場合

次に、無料会員登録から課金(購入や有料会員登録など)につながるWebサイトを例に説明します。

CPA(無料登録)とCPO(課金)の関係

無料会員登録ができるサイトなどでは、様々なCVが設定できると考えられます(資料請求やアプリの無料ダウンロード、無料会員登録、有料会員登録、有料コンテンツへの申し込みなど)。この場合「無料会員登録・資料請求・無料ダウンロード」はお金が発生しない顧客の獲得のためCPA、「購入や有料会員登録など」はサイトやアプリ内で課金が発生するためCPOという考え方になります。

目標CPOから逆算して目標CPAを決める

このようなWebサイトの場合は、「目標CPO⇒目標CPA」の順番で数値を決めます。ここで重要になるのが「引き上げ率」です。引き上げ率とは、無料会員登録をしたユーザーの何%が課金へと至ったかを表す数値です。目標CPOから目標CPAを算出するのは、「目標CPOに引き上げ率をかける」ことで可能になります。

目標CPA = 目標CPO × 引き上げ率

例えば、ある布団屋でWebサイトへの無料会員登録から購入に至るフローがあるとします。無料会員登録をしたユーザーが実際に布団を購入する引き上げ率は30%、販売する布団の価格が20,000円、原価が12,000円、粗利が8,000円とします。

この場合、目標CPOから目標CPAを逆算するには、

1)目標CPOを考える

⇒例えば粗利の30%を残したい場合、目標CPOは5,600円

2)目標CPOに引き上げ率をかけることで目標CPAを算出する

⇒目標CPO5,600円 × 30% =目標CPA1,680円

という流れになります。

考え方としては、購入がCVの最終地点だとして、粗利の何%を残したいかを念頭に最終的に1件の購入に対してかけられる広告費用(CPO)を設定してから、CVのスタート地点である無料会員登録1件に対していくらまで広告費用(CPA)をかけられるかを考えることができ、そのためには無料会員登録ユーザーがどのくらいの確率で購入してくれるのかという割合(引き上げ率)が必要になる、という感じです。

サブスクリプションの場合

サブスクリプションはサービスを継続して利用する定額課金のサービスです。売上は以下の式で算出します。

単価 × 平均利用期間

例えばサービスの単価が1,000円、ユーザーの平均利用期間が30か月だとするとユーザー1人あたりに見込める売上は3万円となり、この売上をライフタイムバリュー(サービスをやめるまでに支払われるお金。以下、LTV)と呼びます。

何か月で広告費を回収したいか

サブスクリプションの目標CPAを決定には、「LTVをどれだけ削れるか」を考えます。上記の例の場合、ユーザーの平均利用期間は30か月と算出されていますが、実際に全員がそこまでの期間利用してくれるかは確実ではありません。そこでカギになるのが、「何か月で広告費を回収したいか」ということです。

例えば上記の例の場合、広告費を1ヶ月で回収したいならばCPAは1,000円、3ヶ月ならば3,000円というように数値を設定します。一般的にWebサービスでは1年で回収することが多いですが、半年でも3ヶ月でも良いのです。要は、「見込まれる売上(LTV)からどれだけ広告費用を割けるか」ということです。

顧客層別の目標CPAイメージ

ここまで商材別のCPA・CPOの考え方をご紹介しましたが、以下では顧客層別で考える目標CPA・CPOのイメージを説明します。

目標CPAを低く設定する場合

目標CPAを低く設定する場合、CV数はあまり見込むことができませんが、残る利益は多くなります。このような手法は、成約率の高いCVで「利益最大化」を図りたいときなどに有効です。成約率が高い、つまり、購入意思がある程度明確な(あまり広告費をかけなくとも買ってくれる)顧客層などが対象になります。

一定の余裕を持たせる場合

目標CPAに一定の余裕を持たせると、低く設定する時と比べて利益は少し減ります。このような手法は、「利益も一定数残したいが、CV数も一定数とりたい」というような時に用います。前述のとおり目標CPAに一定の余裕を持たせることで選べる広告媒体の選択肢がより広がるため、明確な購入意思をもつ顧客層の一段階下にいる「購入検討層」にも訴求することが可能になります。

目標CPAを高く設定する場合

目標CPAが高いと利益は大きく減り、赤字になる恐れもでてきます。通常は赤字を避けて設定しますが、「赤字覚悟でもいいから、よりCV数を多くとりたい」というような時には有効な手法です。広告費用をより多くかけるためアプローチできる顧客の範囲を最大化することができ、商品をまだ良く知らないような「潜在層」にまで手が届くようになります。例えば新発売の商品などで、「市場での認知度を高めればあとは買ってもらえる」と思うような商品は、この手法を用いることで、目先の利益でなく長い目で見て利益を回収できる可能性が高くなります。

CPAを改善するには

目標CPA・目標CPOを設定したものの、実際のCPAの数値が高くなってしまうような場合は、CPAの改善を図るとよいでしょう。主に用いられる手法としては、以下の2つがあります。

コストを割くべき広告を選定する

「CPAが高い広告をやめる」という方法です。結果にあまりつながっていない広告を続けていても利益が減り続けてしまうため、思い切って広告を変えるというのもひとつの手段でしょう。よりCVに繋がりやすい広告を探りながら選定します。例えば、一度自社サイトを訪れたユーザーをサイト離脱後も追従するようなリターゲティング広告などに切り替えると、よりCVに繋がりやすいユーザーをターゲットに訴求することができます。

広告費用を下げる

CPAの高い広告に対して、広告費用を下げることでCPAの数値を下げます。ただし、単純に広告費用を下げすぎるとCV数も大きく減ってしまいます。そこで考えたいのは「無駄な広告費用を削る」ということです。例えば1クリックごとに広告費用がかかるような場合は、無駄なクリックを減らすことで広告費用を下げることができます。このような場合も、よりCVに結びつく可能性の高いユーザーに絞って広告を打ち出すことで、結果として広告費用を下げることが可能になります。

CVR(コンバージョンレート)を上げる

CVR(コンバージョンレート)とは、「Webサイトを訪れた全体の訪問者のうち、何パーセントの訪問者がCVに至ったか」を表しており、「CV数 ÷ 訪問者数(クリック数)」で算出することができます。CVRをあげるためにはWebサイトを訪問したユーザーがよりCVに到達しやすいようにWebサイトのクオリティを上げることが有効です。例えば、以下のような施策が考えられます。

・LPO(ランディングページ最適化):ユーザーの興味を惹く(維持する)デザインにする、読み込み速度を速くする、スマホ対応にするなど

・導線改善:ユーザーのWebサイト内での行動データをもとに、想定される行動経路に適切なコンテンツを配置したり、必要のないコンテンツを削ったりするなど、わかりやすい導線をつくる

・ポップアップバナーの活用:ユーザーにCVに至るアクションを促す効果がある

まとめ

今回は目標CPA・目標CPOの設定にあたり、商材別や顧客層別などケースに合わせた基本の考え方について紹介をしました。

CPA・CPOは「より下げればよい」または「高くしてCV数を増やせばいい」という単純なものではなく、商材や顧客層別に沿った考え方で、最も適した数値を考えることが重要になります。

この記事をお読みいただくことで、皆さんが「CVに対してどれだけコストをかけられるか(利益をどれだけ残したいか)」を考えるきっかけになれば幸いです。

今回の記事を読み、さらに詳しい話を聞きたい、相談したいことがあるという方は、まとまっていなくても大丈夫ですので、お気軽にご連絡ください!

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